午睡

 総司は、屯所の周りを散歩していた。
ふと、目をやると、木陰に人が蹲っている。
「誰ですか?」
声をかけて近づいてから、総司は、あっ、と呟いた。
(神谷さん……なんて無防備な……)
箒を握り締めたまま、清三郎が眠ってしまっている。
ここ数日の激務に加え、掃除や洗濯もやっている、清三郎。
疲れが溜まっているのは総司も知っていた。
散歩の目的の半分は、休みを取るように言おうと思って彼を探していたのだ。
(こんな無邪気な顔で寝られたら、誰も手は出せませんね)
総司はくすっ、と笑った。
見張りのつもりで、自分も清三郎の横に腰を降ろした。

 それから暫く。
総司の姿を探していた土方が彼らを見つけた。
木陰で眠る清三郎の横で、彼を守る様に抱きかかえて眠る、総司。
清三郎の握る箒に、蜻蛉が止まっている。
(昼寝をするには暑すぎず寒すぎず、ってとこか)
土方は暫く眺めた後、そっと総司を揺り起こした。
「総司」
「あれ、土方さん」
「神谷が風邪引くぞ。中へ連れて行け」
総司は、はぁい、と返事をして躊躇うことなく清三郎を抱えあげた。
「軽いなぁ……。神谷さん、帰りますよ」
「ん、沖田せんせ……」
「はいはい、ここに居ますよ?」
まるで、親子か兄弟のような会話だ。
土方は、背後に会話を聞きながら、
(神谷……総司を頼んだぞ)
と、胸の内で呟いた。