夜中に、袖を引かれて目が覚めた。

(おや神谷さん、夢を見てるんですか?)

 彼女の口元が微かに動いた。
「誰を呼んでいるんですかねぇ……」
 どうやら、私ではないようだ。

 だって、とても幸せそうに笑っている。
 あんまり幸せそうだから、このまま見ていたい。

 また、口元が動いた。
今度は、読み取れた。
(兄上……?)

 あにうえ、とは、斎藤さんを指すのか、それとも……。
 もし、斎藤さんだったら、どうしよう。
 私は斎藤さんに嫉妬してしまうかもしれない。

 だって。
 昼間も、斎藤さんは神谷さんを笑顔にできる。
 更に、夢でも、笑顔にできる斎藤さん。
 彼女を泣かせてばかりの私はどうしたら……。