翌日の早朝。
 総司は屯所の庭の片隅に座り込んでいた。
「総司、何を燃やしてるんだ?」
「あ、近藤先生……おはようございます」
 ゆっくり、燃えていく、小さな本。
 そしてそれを、じっと見つめる、総司。
「何か辛い事が、あったのか?」
「え?」
「トシが発句を燃やす時に、同じような表情をしている」
「同じような?」
「発句を燃やす時は……まず、辛い時、だろう?」
 総司は火を見つめたまま、何も言わなかった。
「何かあったら、必ず俺達に言えよ、総司」
 いつの間に来たのか、土方までもがいた。
 彼らは、心配そうな顔をしている。
「はい」
 総司が軽く笑った。
 その後で最後の頁が灰になり、煙がゆっくり流れていった。