秘めた想い

―序章―

 行灯の傍で針を動かしていた総司は、笑みを零した。
「できた」
 縫い物をしていたわけではない。
 土方の見よう見真似で、紙を綴じて本を作っていたのだ。
 無骨な手の平にのる、小さな本。
「これに、書きつけていけば……」
 隊務に私情を交える、などということはなくなる……、総司はそう願っていた。
 針を片付け、いそいそと文机に向かうと、さっそく筆を手にした。
 
(こうしておけば、万が一にも口を滑らすなどということはないでしょう……)
 この想いは一生誰にも漏らさず、墓場まで持っていくと、決めたのだから。