珍獣につき…… 「うふふ、藤堂先生ってば……」
「えへへ〜。でも神谷笑いすぎだよー」
「すみません〜!」
冬の昼下がり。二人仲良く談笑中。
二人とも、手を真っ赤にして洗濯中ではあるけれど。
「平助と神谷か……」
「健康的で爽やかだよなー……」
お茶を啜りながら言うのは、永倉&原田。
「おーお、子犬が二匹」
「若いな」
この寒いと言うのに、清三郎と平助は、いつのまにか水を掛け合ったりしている。
ぱちゃぱちゃ、と水飛沫が跳ねあがる。
同時にきゃあきゃあと、明るい笑い声が木霊する。
「こら、神谷、平助! この寒空で何をしている」
その笑い声を聞きつけたものか、副長がのんびりやってきた。
「あ、土方さん! 聞いてよ聞いてよ、神谷ったらねー」
「あ! ずるいですよ、藤堂先生!」
「べーっ! 早い者勝ちだもんねー」
「藤堂先生大人気ないっ!」
ぎゃあぎゃあ、と騒ぐ、二人の頭から何かがばさばさっとかけられた。
「うふふ、あったか〜い!」
「土方さん、ありがとう!」
気が付くと水が滴るほど濡れていた二人は、しっかりと布団にくるまれ、もこもこだ。
「風邪をひかれてはかなわん」
ぷい、っと横を向いた副長の耳が微かに赤い。
そのまま、原田や永倉も交ぜてお茶を飲んだりお団子を食べたりした後、平助と清三郎は眠たくなったらしい。
二人そろって、うとうと、と舟を漕ぎ出した。それを見た土方が、にやり、と笑った。
「新八、左之、二人をそのままそれぞれ縛って、そこへ並べてくれ」
「はいよ」
並べられた二人は起きる気配もない。
一旦自室へ行った土方は、何かを書いた紙を持ってきた。
ぺたり、とそれを二人の眠る頭上に留めた。目が覚めても、二人はそれを見ることが出来ない場所だ。
『起こすな、危険。 冬に水遊びを好む珍獣。 何を言っても聞き流すこと。 土方』
お腹を抱えて笑い転げる、原田と永倉を率いて土方はその場を颯爽と去っていった。
「ぷくく……藤堂先生も、やっぱりまだ可愛いなぁ」
「神谷と遜色ないもんな」
「気持ち良さそうに寝てるよー」
「八番隊の巡察、副長が代わりにいったって!」
「起きたらびっくりだろうなー」
何時の間にか、隊士たちがくすくす笑いながらぞくぞくとそこに集まっている。
勿論、会話は皆小声だ。
何を隠そう、総司が、良い物が見れますよ、とふれ回ったのだ。
更には、誰が言い出したものか、お酒まで出てちょっとした宴会だ。
「花見と月見、同時にやってる気分だぜ」
誰かが言い、どよどよ、っと笑いが起こったが、眠る二人は気が付きそうもない。
「これだけ物音がしても起きないのでは、珍獣ってのも間違いじゃないな……」
斎藤までもが、言い出し、その場は一層笑いに包まれた。
が、二人は相変わらず眠ったままである。
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