ちび平助の日常・第1話

 平助の朝は、早い。しかも、朝から元気が良い。

 「しゃの〜!」
「ぐえぇぇ!」
 まだ夢の中にいた左之助は、お腹の上にどーんと乗られて、一気に覚醒した。
「平助……」
 左之助は、お腹の上の平助を軽々と持ち上げ、ばりばりと頭をかいた。
「あしょぼ〜」
「はいはい……」
 きゃあきゃあ、と喜ぶ平助をみて、左之はふと思った。
「お前、よくここへ来たなー」
 平助が寝かされているのは、子守係の総司と神谷がいる一番隊の部屋。で、今いるのは一番遠く離れた、十番隊の部屋。
 暗い廊下を幼児が一人でここまで来たのだ。たいしたものだ、と思ってしまう。
「餓鬼になっちまっても、性格はかわらねぇのなー」
「う?」
 幼いのにこれだけの度胸。八番隊組長をつとめ、魁先生、といわれるだけのことはある。
 左之助は、よっ、と反動をつけて起きあがった。

 同じ頃。目覚めた一番隊の隊士たちは、平助がいないことに慌てていた。
 が、十番隊の部屋まで続く倒れた障子や襖を見つけ、さらにそこに開いた大穴を見つけて閉口した。
 「藤堂先生、障子や襖を突き破って……それを倒しながら原田先生のところまで行ったんですね……」
「流石というか……なんというか……」

 「くしゅん」
「お、平助、風邪かぁ?」
「違いましゅ〜!」
 藤堂平助、左之助に肩車してもらっておおいにご機嫌である。